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 2014年8月のコラム

過去のコラム
真珠、一粒の宇宙

小松 博

第4回

「まき」

真珠については数々の誤解があります。この連載では折に触れ、それらを解いていきたいと思います。「まきが薄くててりもない」とか「よく巻いているしてりもある」などと真珠のまきについてはてりと結びついた言い方がされますが。
てりとまきは全然違った概念です。まきとは核の上に巻かれた真珠層の厚さを言い、数字で純然と表されます。てりは真珠層内部から出てくる光の輝きの強弱です。極端なうすまきを別にして両者には何ら相互の関係はありません。養殖真珠とは、核という真珠とは違った物質の上に真珠層を巻かせたものを指しますから、より多く巻いた方が真珠に完璧に近付くという考えも背景にあると思います。しかし淡水真珠の養殖方法は核を使いません。その内部は芯まで真珠層なのです。養殖イコール内部の核という図式が通念になっていますが、これも間違いです。

第3回

「風紋」

かつて鳥取の砂丘を訪れたことがあります。こ高い頂きに立つと日本海がすぐ真下に見えるのですが、丘のうねりの中に入ってしまうと、砂に閉じ込められた気持ちになります。その種の閉塞感からの救いが風紋です。砂の上の微細な模様が、風向きで刻々と変化していくからです。 真珠の表面を顕微鏡で100倍位に拡大しますと、この風紋に似た模様が現れます。正確には結晶成長模様と言いますが、模造真珠を除けばすべての真珠に見られる普遍的な模様です。逆に言いますと今の科学技術では人間が決して作れない模様です。 真珠層を構成している微細なカルシウムの結晶の集合状態がこのように見えるのです。 風紋が風向きで刻々と変化するように、真珠のこの模様も、海と貝の様々な条件でいろいろに変化します。厳密に見ればひとつとして同じ模様はありません。それ故、私たちは、これを指紋にも例える場合があります。

第2回

「輝き」

一口に真珠の輝きと言いますが、厳密に言いますとその輝きのタイプは多様です。その余りの多様さ故に、私たちはこれを“てり”と総称しているのです。真珠を、金属磨きを塗ったクロスの上でこすって見て下さい。わずかに光沢が出てきます。これが表面光沢の向上です。“てり”の良い真珠は自分の顔が映ると、よく言われます。これ(“てり”)は、生まれつきのもので、いくらこすっても出てくるものではありません。しかもよく見ますと、ピンクやグリーンの色合いがにじみ出ております。これは内面光沢が良いからです。内面光沢が優れた真珠をさらに何個か比較して見ますと、くもりに微妙な差があることに気がつきます。透明感の違いです。 既存の真珠の輝きという概念を一蹴するような、鋭い光を放つ輝きがあります。極く一部の真珠に見られる現象ですが、“メタリック”と呼ばれる金属光沢です。

第1回

「オーロラ」

真珠は三つの色を持っています。
ナチュラル・ブルーに代表される黒みを帯びた色、これは真珠内部の異物が透けて見えるために起こります。真珠層を構成しているたんぱく質の色、ゴールドやブラックがこれに該当します。真珠層の構造から光が作り出す色、これが真珠を真珠にあらしめている有名なピンク色です。輝きを伴って現れます。長い間、乞われる度にセミナーや執筆の中でこのように話してきました。一種の科学的啓蒙と自分では位置付けてきたつもりです。しかし、今、反省しているのですが、私自身の中に既成概念にどっぷりと漬かったマンネリがあったのです。もう一つの色があったのです。それは真珠に下から光を当てると見える色です。黄緑色・暗赤色のオーロラのような舞う色です。もちろん総ての真珠に出るわけではありませんが、第四の色として存在しているのです。

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