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 2014年9月のコラム

過去のコラム
真珠、一粒の宇宙

小松 博

第9回 | 2014.9.29

「夏こそ真珠」

真珠についての数ある誤解のひとつに「真珠は夏に弱い」があります。
真珠は酸に弱い→汗は酸性である→夏は汗をかく→故に真珠は夏に弱い、
という図式がいつの間にか定着してしまったのです。
真珠の主成分はカルシウムです。確かにカルシウムは酸で溶けます。
しかしこの場合の酸とは塩酸や硫酸などの強力な酸のことであって、こんな酸は私たちには無縁です。
むしろ真珠の持つたんぱく質に着目すべきです。
汗に対する一種のガード役として、真珠を守っているのがたんぱく質です。
1年を通し最も肌を出すこの季節こそ、逆に真珠を最大限に身につけるべきなのです。
世はまさに真珠多様化の時代です。色やかたちの様々なものが市場にあふれています。
自分の肌にマッチするものを選び、海や山を背景に思い切った演出をする、まさに夏こそ真珠の出番の季節です。
「着用後は拭く」この原則を忘れずに。

第8回 | 2014.9.22

「大発明」

今からおよそ百年前に、この日本で、御木本幸吉達によって始められた真珠養殖法は
今世紀を代表する大発明であることはかなり知られている事実です。
ところが、なぜ大発明であるかというその理由となるとほとんど知られておりません。
「真珠を発明したからでしょう」では、その理由の答えにはなっていません。
貝に核を入れて作るのが養殖真珠ですから、核を入れることを発明したと思われがちですが、
そんな単純なことでは世界的な大発明とは言えないと思います。
答えは、百年前に今で言う臓器移植を発明したのです。
貝という動物のみが持っている貝殻を作る臓器(外套膜と言います)を一部移植して、体の中に貝殻を作らせる、
これが真珠養殖法の核心です。
さらに専門的に言えば、臓器移植というより再生医学という21世紀の技術です。

第7回 | 2014.9.16

「面」

真珠表面の円滑さの度合いを「面」という言葉で表わします。きずとよく混同されますが、きずは突起や窪みのように、表面に対し不連続な存在です。面は表面そのものが波立っているような状態を指しているのですから連続した存在です。ネックレスなどの場合はそれほど目立ちませんが、リングなどは気になる現象です。この現象を顕微鏡レベルで拡大観察すると大別して三つのパターンに分かれます。ひとつは表面の波打ちが顕著な例です。まるでミミズがのたうち回っているように見えます。二つ目は表面に微小な孔が無数にあいている例です。三つ目は“ハンマーマーク”とも呼ばれていますが、槌目のような模様が表面に広がっている例です。この正体は、結晶の山の連なりです。カルシウムの結晶が垂直方向に積み重なって山を呈するのを電子顕微鏡が見せてくれました。

第6回 | 2014.9.8

「かたち」

丸い核を入れるのだから丸い真珠が出来るのは当然という見解があります。ではサイコロ状の核を入れれば、そういう真珠が出来るかと言いますと、出来るのです。そもそも核という表現がおかしいのであって、正確に言えば、真珠のかたちを規制する一種の鋳型が“核”なのです。では真珠を作るのは誰かというと、「真珠袋」という一種の臓器がそれにあたります。臓器ですから、貝本体の調子、健康状態や生理状態でさまざまな影響を受けます。それはかたちに対しても反映され、ゆがみやひずみとなって現われます。問題は鋳型のかたちに目を奪われるのではなく、生命体が生み出すゆがみやひずみ、生命の履歴のおもしろさにあります。そしてさらにおもしろいのは、私たち人間という生命体がそのかたちに個性を感じることにあります。真珠は一個として同じかたちはありません。

第5回

「きず」

真珠のきずも、奥深くて多様な世界です。海での養殖過程の中で出来るきずが先ずあります。
突起状、窪み状と形態は多様であり、その大きさも様々です。かつて在職していた私の会社では、「当社のブランド品は、熟練者が自然光のもとで30センチ離れてみて、縫い針の先ほどのきずが0~3個程度のもののみ扱う」ときずを厳選したものです。ほとんどの真珠は一種のエンハンスメントとして加工処理を施します。この過程で出来るのが加工きずです。ひびやスポットなど形態は多様です。このきずは真珠層の脆弱さのバロメーターでもありますから要注意です。隠れきずというのもあります。養殖工程上の一種のひずみで出来、潜在していたものが乾燥などで現われるのです。南洋真珠などに時々見かけます。最後に、金属や何か硬いものとぶつかってできる損傷きずがあります。

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