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 2014年10月のコラム

過去のコラム
真珠、一粒の宇宙

小松 博

第13回 | 2014.10.27

「酸に強い理由」

「真珠の主成分は大理石と同じものですが、それよりはるかに強いのですよ」、
「真珠には僅かですがたんぱく質が存在しています、これが他の宝石にはない特徴です」、
「真珠をきれいにするということは、表面の層を一層むいて新しい層を出すことですが、
これはちょうどキャベツの皮をむいてきれいな層を出すのと似ています」、
よく言う言葉です。

真珠の構造は、同心円状にカルシウムの層が何千層と巻いて出来ています。
一層一層の厚さは極めて薄く、1ミリの数千分の1、ミクロン単位ですから目で見ることは出来ません。
真珠を半分に切って、電子顕微鏡で見ますと木材の年輪のように、その層のまかれている状態が分かります。
カルシウムの層と層の間はたんぱく質でしっかり接着されています。
ですから酸がカルシウムを溶かして中に侵入しようとしても、
たんぱく質がガードしますから次の層は守られるわけです。大理石より強い理由です。

第12回 | 2014.10.20

「薄まき」

私の研究所では真珠のグレーディングとしてマークというのを発行しております。
てりが優れていることのギャランティー化です。
この検査では、他の品質要素は一切見ません。かたちや色、きず等のあれこれも問いません。
ただてりのみを見るのです。
唯ひとつ、例外は薄まきです。これは品質以前の問題、真珠としての存在を問う問題だからです。
核固有の縞模様が透けて見える。
はけでサッと塗ったように申し訳程度に真珠層がくっついているものを真珠と言えるでしょうか。
「夏までは順調に巻いていたのに10月に悪い潮が入ったため浜揚げは惨憺たるものでした」、
先日、熊本の生産者Aさんが山のような薄まき珠を持ってやってきました。
その言葉にひっかかりを感じた私は、その薄まき珠を分析してみました。
結果は驚きです。貝が真珠を食べてしまったのです。緊急避難で真珠からカルシウムを摂ったのです。

第11回 | 2014.10.14

「保管法」

5500年前の真珠を鑑定したことがあります。縄文時代の真珠です。
触るとぽろぽろ剥がれ落ちますが、てりもあり、顕微鏡下では真珠特有の成長模様が風紋のように見えます。
地中に五千年以上埋もれていた真珠がなぜ消滅しないで存在していたのか。まず抱いた疑問です。
答えは簡単でした。その真珠は沢山の貝殻と一緒に水の中に埋まっていたのです。
見方を変えれば飽和カルシウム液の中に浸かっていたのですから、真珠のカルシウムは溶け出しません。
従って何千年であろうと真珠はそのままである筈です。
かつて日本のアコヤ真珠大量生産の時代、生産者は真珠の保存に苦労しました。
何年か保存して値上がりを待とうとするのですが、長期保管法が確立していないため、品質低下を起してしまいます。
真珠をカツシウム粉末液に漬けるという長期保管法は縄文時代から教わりました。

第10回 | 2014.10.6

「蘇生」

最近聞いた話を一題。
M社のジュエリー製作部門は日本で最も古い伝統を持っています。
明治の初めに、飾り職人をヨーロッパに派遣してその技術を習得させたところから出発しているのです。
そんなわけから沢山の方が見学を希望してくるのだそうですが、
先日も駐日フランス外交官の奥様たち一行が参観し、
すばらしいジュエリー製品が出来上がっていく工程に目を輝かしたのだそうです。
懇談の席上、一人の婦人がこんなことを言ったそうです。
「わたしは真珠が大好きなのですが、真珠って2、3年で死んでしまうんですよね。何か生き返る方法がありますか」
養殖真珠のオリジネーターを自負するこの会社の幹部は、
聞き捨てならない言葉に驚いて、いろいろ尋ねてみたそうです。
真珠の手入れという考え方が全く知られていなかった、これが真相です。
「着用後は拭く」、真珠を<殺さないため>の鉄則です。

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