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 2014年12月のコラム

過去のコラム
真珠、一粒の宇宙

小松 博

第20回 | 2014.12.15

「ケシ」

「ケシ」とは芥子(けし)の実のように小さい真珠の呼び名です。最も小さいものは「砂ゲシ」といって、直径が1ミリ以下しかありません。このネックレスを見るたびに、その孔開けの様子を想像してしまいます。
この「ケシ」を巡って、国際会議で長い間論争が繰り返されました。「天然」か「養殖」かという論争です。
養殖用の貝から採れるのだから広義の「養殖」に入るという論点と、その形成に人間は全く関与していないから「天然」だという論点のぶつかり合いでした。
結局、「海水産真珠養殖の際の副産物として産出する無核の養殖真珠」ということで決着しています。
真珠に対する日本人のとらえ方と欧米人のそれにはいろいろ違いがあります。それらは主に生産への関与の仕方から派生しているようですが、宝石の条件である「希少性」のとらえ方の違いも大きいようです。

第19回 | 2014.12.08

「火炎地獄」

Flame:①炎、火災、燃えるような色彩(光輝)②激情、熱情③[戯]恋人、情人(コンサイス英和辞典より)

コンクパールの存在とその希少性を世に知らしめたのは銀座のM真珠店でした。
アコヤ、黒蝶、白蝶、淡水とさまざまな養殖真珠が百花繚乱と咲き誇っているこの時代の中で、天然真珠というひとつの席をコンクパールが切り開いたのです。
以来、ホースコンク、メロメロパール、あるいはアメリカ淡水のフェザー、ドッグティースなどなど席が温まる暇のないほどの天然真珠ラッシュが続いています。
しかし、私にとっていまだに忘れられない、強烈な印象を与えてくれたのはコンクパールのフレームでした。
顕微鏡下に見たその世界は燃え盛る炎の群れでした。この世のさまざまな悪鬼を焼きつくす火炎地獄がこの小さな真珠の中に凝縮していたのです。

第18回 | 2014.12.01

「ローズバット」

ローズバット、バラのつぼみのことです。こういう呼称の真珠があることを最近知りました。 実物を見てなるほどと、このネーミングのうまさに感心しました。まるでコンペイトウのようなかたちです。 小さな突起が四方から飛び出ている、バラのつぼみにとげがそのまま出たという象徴を込めたかたちです。
どうしてこのような真珠が出来るか、好奇心をもって構造分析をしてみました。
芥子(けし)粒のような真珠が貝の中に幾つか出来たとします。 するとひとつの中心になる真珠がまわりの“芥子”を“吸収します。 次々と出てくる“芥子”を“中心”は吸収し合併し大きくなります。
貝の体の中の出来事ですから、このような合併劇を想像するのですが、これはまるで宇宙での星の形成の様子とそっくりです。 あるいは巨大企業の成立にも似ていますが…。
これがローズバットの成因です。そしてこんな複雑な生理現象は養殖では不可能ですから、これは天然真珠の世界です。

※金平糖、菓子の名。氷砂糖を水に溶かして煮詰め小麦粉を加えたものに、芥子を種に入れ、かきまわしながら加熱して製する。
周囲に細かいいぼ状の突起がある。(岩波「広辞苑」より)

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