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過去のコラム
真珠、一粒の宇宙

小松 博

第24回 | 2015.01.26

「きめの細かさ」

真珠の品質の良さを讃えるのに「真珠層のまきがしっかりしています」、「真珠層のきめが細かいのです」の二つの表現があります。
「まきがしっかりしている」というのは、核の上に厚く真珠層が巻いていることをいい、耐久性がありますよという意味です。私の研究所では片側0.4ミリ以上巻いていれば十分という立場をとっています。たった0.4ミリですが、カルシウムの結晶のレベルから見ると1300層がそこに詰まっているからです。
「きめが細かい」というのは、なぜ「てり」が美しいか、その理由をいう時に使います。
カルシウムの結晶の1300層が、何のゆがみもなく整然と配列している状態、例えていえば、れんがの壁のような配列、電子顕微鏡でしか見ることのできない世界ですが、これが「きめが細かい」の実像です。
そしてこれが自然の妙というのでしょうが、この「きめの細かさ」は、私たちの目にはやわらかい輝きとピンクの光彩に映じるのです。

第23回 | 2015.01.19

「満月と真珠」

憧憬:数千年にわたって培われた人類にとっての宝石としての真珠。好奇心:なぜ貝の中から真珠が出てくるのか。
この二つが相まってさまざまな神話、寓話が生まれてきました。それらの中の最高傑作が満月と真珠の話です。
満月の夜になると必ず貝は、深い海の底から海上に浮き上がってきます。そして貝殻を大きく開けて静かに待ちます。
真上にきた時、月は貝の中に一粒の雫を落とします。その雫が何年もたって真珠になるという話です。
この話がなぜ神話の最高傑作なのでしょうか。それはこの話の中に真理の一部があるからです。
貝の成長に伴い貝殻も大きくなります。貝殻が大きくなる時には、「ハサキ」と呼ばれる先端部が先ず伸びることから始まります。そしてこの「ハサキ」の伸びは必ず月2回、大潮の日だけです。大潮の日とは満月と新月の日を指します。

第22回 | 2015.01.13

「始めにテリありき」

21世紀に入った年の1年間は、前世紀間に構築されてきたあらゆるシステム、構造、枠組みが欠陥を露呈し、ガラガラと崩れ始め、それに対応するための再構築が始まったことを具体的にニュースや生活実感として体験する毎日でした。
それは真珠の世界でもまったく同じです。養殖真珠がこの世に登場したのが1907年ですから、前世紀をかけて、この養殖真珠に関するひとつの体系を作ってきたわけです。 そしてその体系が今崩れ始めているのです。
ではその体系とは何でしょうか。あえて一言で言えば「色」です。真珠の価値を色を中心に据えて展開したことです。 具体的には「ピンク色が良い真珠だ」ということを指します。ピンク色への着色が崩壊の兆しでした。
今、アコヤ、白蝶、黒蝶、イケチョウ真珠の多様化時代の中で体系の再構築が始まっています。
再構築の中心には何が座るのでしょうか。一言で言えば「テリ」です。

第21回 | 2015.01.05

「珠が喰われる」

「当然のことである」と思われていたことが、何かの機会で、ひっくり返り、そこから新しい視野が広がり始めるということは、人生において時々あることです。
真珠を対象とする専門科学の分野でも、それに似たことが最近ありました。
「天然真珠ができる場所は貝柱と外套膜の中だけである」という某論文中の記述です。
養殖真珠の大半は卵巣の中でできます。というのはそこに核とピースを入れるからです。となると、この養殖の方式は天然とは全く違ったところで作っていることになります。
この視点に立って、最近の真珠作りの諸問題をながめてみると、問題解決の大きな手がかりが得られます。
例えば卵巣が発達するには大量のカルシウムが必要とされます。もしその時期に、卵巣に真珠が入っていれば、卵巣は真珠からカルシウムを摂取します。このことはその真珠は急激に痩せる、まきが薄くなることです。

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