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真珠、一粒の宇宙

小松 博

第37回 | 2015.4.27

「マヨネーズ真珠」

「マヨネーズで真珠が出来る」という話題がテレビや雑誌で興味深く報じられたことがありました。10年余前のことだったと思います。
そんなことは有り得ないわけですから、私は一蹴しておりました。宝石鑑別の専門家の何人かの友人は、好奇心からその報じられた処方で試みたようですが、誰も再現は出来ませんでした。
その話題忘れかけた5、6年前のことです。某テレビ局の方から、その真珠の鑑定を依頼されました。 
一蹴していた私ですが、わざわざ訪ねてくれたこともあって調べてみました。 さっと見て分かりましたが、念の為、顕微鏡で確認して、「これは本物の真珠です。マヨネーズで作ったものではありません。どこかですり替えられたのではありませんか」 現代の科学技術の最先端では、真珠のカルシウムの結晶をある種のたんぱく質が誘導していることは突き止めました。しかし、真珠層の再現となるとそれは遥か先のことです。

第36回 | 2015.4.20

「動物系統分類学」

私の書棚に「動物系統分類学」が並んでいます。全24冊、全巻八千五百頁の大著です。
地球上に生存するすべての動物群を分類したこの本は世界でも稀有の存在です。
何しろ刊行を始めたのが1961年。執筆者71人の内25人は他界。出版社の中山書店は数億円の赤字を出しながら、故社長の「学術出版では、売れ行きや採算がどうであれ、一度世に送り出した企画は安易に変更してはならない。真実良い本は結果として必ず報われる」を意地で守り切って完成させたものです。
真珠は、この本の5巻(上)軟体動物Ⅰ、第7鋼、二枚貝類Bivalviaの生体生産物ということになります。
冒頭の文章、「軟体動物という門の名称のように一般に皮膚は柔軟で、表面は常に粘液におおわれている粘膜であるが、とくに体の背面をおおう皮膚は特殊化して外套となっており、これから貝殻を分泌している」
そしてこの外套が体内に貝殻を分泌していまう偶発が真珠ということになります。

第35回 | 2015.4.13

「カルシウム」

真珠の主成分はカルシウムです。
厳密に言うと90%以上が炭酸カルシウム、残りがたんぱく質や水分、その他になります。
昔から真珠の粉末が薬として使われているのも、あるいは真珠が酸に弱いのも、このカルシウムの性質によるものです。
ところが、成分面から離れて、構造面からこのカルシウムとたんぱく質の関係を見ると、僅少のたんぱく質が主役であるカルシウム以上に重要な役割をしていることが分かります。
まずカルシウムは極小の結晶として存在します。その極小の程度はミクロン以下のレベルです。計算によると7ミリの直径の真珠は2200億個の結晶が集まって出来ています。
さらにこれらの結晶は1個1個がたんぱく質の膜で包まれています。まるでキャラメルのように。
さらにこの結晶は霰石(あられいし)という特殊な形態をしています。炭酸カルシウムは方解石(ほうかいせき)という形態を採るのが一般的ですから、極めて珍しい例です。最近の科学は、これもたんぱく質の指示で起きることを証明しました。

第34回 | 2015.4.6

「花珠」

“花珠”、きれいなイメージを誘う言葉です。養殖真珠発祥の頃から語り継がれている言葉ですが、誰が唱え、どのような真珠を指したのかははっきりしていません。
海から揚がった真珠の内、ずば抜けて高品質のものといった漠然としたものです。例えて言えば真円で無キズ、ピンクの光彩色を伴ったテリの極めて強い、出現率5%未満の真珠と言ったところでしょうか。
ところでこの珠に冠した「花」という美称ですが、「社交界の花」とか「都の花」というように古くからよく使われています。
筆者の場合は、“花珠”を頂点に“胴珠”“裾珠(すそだま)”という、しばしば使われる出現率の三角図形を、袴姿の美人に例え、顔の部分を「花」にイメージ化したものです。
最近、ミキモト真珠博物館の館長であるM氏が興味ある話をしてくれました。
三重県の漁民の間で使う、「漁のハナ」、即ち漁の一番乗りでは「端」の字を使い、それが語源ではないかというのです。「花」か「端」か、いずれにしてもトップの意味です。





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