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 今月のコラム

今月のコラム
真珠、一粒の宇宙

小松 博

第191回 | 2020.09.03

冠婚葬祭よりテリを重視する時代の始まり

識者によれば、五千万本のアコヤ真珠ネックレスが日本の家庭にはあるそうです。そのほとんどは1970年代(日本の好景気の始まり)以降に購入されたものです。そしてこの“五千万本”のほとんどは、購入依頼、糸替えはされたとしても、クリーニングはされていない筈です。着用時の汗や皮膚分泌物、あるいは化粧品等によって真珠層には“くもり”を生じている筈です。この“くもり”こそネックレスの汚れなのですが。

なぜクリーニングがされていないのでしょうか。答えのひとつは真珠のネックレスのクリーニング法が知られていないからです。もう一つの答えは、こちらの方が大切なのですが、ほとんどの方々はネックレスが汚れているとは思っていないからです。

さてこういう現状の中でどう対処するかです。一つの方法として「真珠と深く繋がっている冠婚葬祭とのくびきを切り離す」ということを考えています。

先ず真珠と人間との関係を歴史的に考えてみましょう。著名な宝石学者である米国のクンツ博士は「自然のままで完璧な美しさを誇る真珠は、人類が最初に出会った宝石である」と1908年にその著書で言い切っています。この場合の「宝石」が意味するものは、当然ながら美しさを指しますが、もう少し深く言いますと、光の干渉という現象により、光が作る色彩(虹のように)を放っていることを指します。

養殖真珠の世界はこの十数年で大きく変わりました。世界中の海で、いろいろな貝を使った真珠が産出されています。大きさも色調もいろいろ異なり、その多様性が強く訴える時代になったのです。アコヤ真珠だけの時代は終わったのです。

しかしエンドユーザーの立場に身を置けば、虹のように様々な光の色彩を放つ真珠は、宝石として依然として価値ある真珠なのです。“テリ”が一層重視される時代なのです。

JOW-Japan新報 2016年10月号

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