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 今月のコラム

今月のコラム
真珠、一粒の宇宙

小松 博

第120回 | 2016.11.28

百年の確執

先日、ある種の“縁”で「エンドスコープ」を入手しました。1920年代にパリで製作されたものです。当時、日本産養殖真珠の登場に驚愕した欧米の宝石商達は、この時代の先端科学技術を総動員して天然・養殖の鑑別法を模索しました。「ルシドスコープ」「パール・コンパス」「ラウエ写真」等々の機器が考案されました。それらの中でこの機器は最も精度が高いと言われたものです。原理は、天然は層が中心から同心円状に形成されているのに対し、養殖は中心に核が入っているという構造上の違いに着目して、孔の中に光を入れてその光束の動きの微妙な違いで判定するという方法です。

現在私たちは知的好奇心から、この原理を復元したいと考え機器の修理修復に取り組んでいます。痛感することは、「養殖・天然の違いは核の有無にあり」という考えが根強く残っていることです。流通を席巻している淡水真珠はすべて無核である現代においても。

第119回 | 2016.11.22

未来の真珠世界

大量生産、低品質、価格破壊。これが現在のグローバルに見た真珠の世界です。安定していたかつての世界に対し今は混沌(カオス)の世界です。では未来の秩序ある世界を想像してみましょう。当然ながら宝飾品としての真珠の世界です。

第一に価格、品質体系の中心軸が、現在のサイズからテリに転換して再構築されます。そのためにはテリ現象の全面解明とその客観的判定法の国際基準の確立が必須です。

第二に経年変化を防ぐ為の、販売前の品質チェック体制が再構築されます。そのためには加工工程や稜柱層分泌の実態把握に基づくチェック法の国際基準化の確立が必須です。

第三にメンテナンス体制が再構築されます。そのためには「真珠は手入れが不可欠な宝石」という従来型発想を脱皮して、日常的なお手入れの励行と同時に冠婚葬祭に合わせたクリーニングの習慣化が必須です。街の宝飾店の“クリーニング”業務は必然なのです。

第118回 | 2016.11.15

白い布と黒い布

真珠の品質は、一般的に熟練者による目視評価で行われています。この場合、北窓光線下、白いクロスあるいは黒いクロスの上に真珠を置いて評価するのが業界の常識です。さてこの2種のクロスですが、真珠の特性に根拠を置く、実に考え抜かれた使われ方がされています。ラウンドかセミラウンドかといった形の微妙な違いは黒バックです。珠の周縁部に現れる僅かな黄色みの有無については白バックが最適です。

光の干渉現象であるテリ、その干渉色を見るのは2つが使われます。ホワイト系アコヤ真珠は黒バックの下で、中心の青緑と周縁の赤紫が鮮明に現れます。クロチョウ真珠は白バックを背景にした時、周縁部に緑と赤のピーコックカラーが現れるのです。これらは球体である真珠の上半球に透過の干渉色、下半球に反射の干渉色という一種の“2色性”を、クロスという簡単な道具で見抜く、経験則が裏打ちされているのです。

第117回 | 2016.11.07

テリとまき

「まき」というのは、核の上にどの位真珠層が巻いているか、その厚さを言います。「テリ」というのは、その強弱は、その真珠層が、例えて言えばどの位きめが細かくできているかで決まります。両者を混同してはいけません。日頃から私が説明している内容です。

この説明は基本的には正しいのですが、最近になって両者の相互関係ということから、「核からの反射光」という存在に気が付きました。真珠に入射した光は、テリに関連した働きから言うと2通りが考えられます。ひとつは真珠層表層で起こす干渉です。ふたつは核にぶつかって出てくる反射光です。前者は緑や赤紫の干渉色として私たちの目に飛び込んできます。後者はまっ白い光として目に入ります。真珠層は0.3ミリより薄くなると、核からの反射光が急増します。ということは、干渉が生み出した美しい緑や赤紫が白い光で消されることを意味します。厚まきはテリの美しさを守る役割をも果たしているのです。

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