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 今月のコラム

今月のコラム
真珠、一粒の宇宙

小松 博

第123回 | 2016.12.26

ボーダー問題の解決

真珠の品質評価を生業とする当社にとって、“永遠的課題”が「ボーダー問題の解決」です。例えば真珠のテリを評価する場合、ある基準を設定し、それを超えた場合に合格と判定します。遥かに超える様な“逸品”なら楽なのですが、基準ギリギリのものの判定が厄介なのです。この問題を解決する一つの切り口を「薄まき」問題に取り組んでいて見出しました。「官製はがきの厚さ以下が薄まき」というのがこの業界で引き継がれてきた伝承です。ノギスで測ってみると0.25ミリです。そこで貝殻真珠層を薄片化し、その厚さを0.1ミリ刻みで1.0ミリまで用意し、光の透過率を測定する実験を行いました。

結果は0.3ミリを境に急激に透過率は上がるのです。伝承は科学的根拠があったのです。

「ボーダー問題の解決」とは、科学的根拠を持った基準を決めることです。そして最も傾注すべきことは、新しい切り口でその科学的根拠を探すことにあるのです。

第122回 | 2016.12.19

光が演じる饗宴

先日「インセクト・フェア」を見学しました。1年に1回開催される昆虫のマニア達の交換・販売会です。圧巻は蝶たちの展示です。世界三大美蝶のひとつである「アポロ蝶」、飛ぶ宝石と言われる「アグリアス」。色を刻々と変える「オーロラモルフォ」等々が、その色と輝きを競い合っていました。

ところでこれらの蝶たちが演じる美しさは、見方を変えれば光が演じる美しさとも言えるのです。美しさの仕掛けは羽の表面にある鱗粉です。鱗粉の構造や色素に光が当たって反射・吸収を複雑に繰り広げた結果あの美しさが生まれるのです。鱗粉という舞台と衣裳を提供された光が輝きや色彩を演じているとも言えるのです。同じことは真珠の場合にも言えます。アコヤ真珠のピンクも黒蝶真珠のグリーンも、真珠層が持つ構造や色素を提供された光が、球体という舞台で演じた結果の、輝きや色彩なのです。

第121回 | 2016.12.12

色線(しきせん)

貝の体の中で生まれる真珠は、その生成メカニズムという観点に立つと、不思議、未解明の分野が未だに山積しています。それらの“山”のひとつに「色線」(しきせん)があります。外套膜先端部付近に見られる淡い黄緑色の条線です。解剖学的にも生理機能的にも未解明の一本の線ですが、実践的には重要な意味を持っています。色線の名前の通り。線を境に真珠の色の濃淡が分かれるからです。黒蝶貝では、線の外側(外際 がいさい)を使えばより黒い珠が、内側(内際 さいさい)ならより白色系の珠ができるのです。両サイドを構成している細胞の色素分泌能力の違いが移植後も維持され、真珠の色に反映すると考えられています。

最近の研究でさらに興味ある現象が見出されました。外際部を子細に観察しますと、そこは七色の光の帯から構成されているのです。何とテリにも外際部はかかわっているのです。色線が持つテリへの影響力、この活用に養殖の未来がかかっているかもしれません。

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