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 今月のコラム

今月のコラム
真珠、一粒の宇宙

小松 博

第128回 | 2017.01.30

真珠の夢を広げたスギ花粉症治療法

「真珠養触法の発明の凄さは、今から百年以上前に一種の臓器移植を考えだしたことにあります」常々私がセミナー等で話していることです。この凄さの中味は、専門的には免疫細胞、アレルギー等現代医学の最先端の領域に属するからです。イケチョウガイにカラスガイのピースを移植しますと、生成するのはカラスガイの色素を持った真珠です。このことは「異種間移植」として真珠の専門家の間では広く知られていることですが、淡水の貝のみに起きることで海の貝では不可能と言われてきました。

2011年1月、愛媛新聞がショッキングな記事を掲載しました。「アコヤ貝で“黒真珠”、愛媛大教授らの研究グループ」マベや黒蝶貝の真珠をアコヤ貝で作ったというのです。この不可能を可能にしたのは、何とスギ花粉症の治療法です。花粉アレルゲンを注射し続けることで一種の免疫を作ることを応用したのです。名付けて「免疫寛容誘導」と言います。

第127回 | 2017.01.23

透明感

『光学』と言う専門誌で、「肌の透明感測定」という論文に出合いました。著者は化粧品会社の研究所の方です。論文によりますと、日本人女性の感じている肌の悩みの中で、透明感に関するものが非常に高いのだそうです。「透明感のある肌」とはどういう肌の状態を意味しているのかを分析した結果、「にごりのない肌」「きめの整った肌」といった表現が高い関連度を示しており、また光学的には、皮膚内部から反射されて戻ってくる内部反射光に起因するのだそうです。

テリの良い真珠を、プロ達はしばしば「透明感のある珠」と表現します。それは「にごりのない珠」であり、「きめの整った真珠層」から来るとも言われています。私たちの最新の研究では、真珠内部に入った光が透過の干渉光として戻ってくる度合いが多いほど「透明感のある珠」になることが明らかになりました。女性の肌と真珠は相性が合うようです。

第126回 | 2017.01.16

3つの誤謬

「人為的に核を入れてできるのが養殖真珠である」「光沢のことを真珠の世界ではテリと呼んでいる」「真珠のクリーニングとは、ネックレスの糸換えのことである」、以上の3つが人々の間に広く定着している。しかも真珠の本質問題にかかわる「3つの誤謬(ごびゅう)」です。

なぜ本質問題であるのかと言いますと、真珠層そのものへの無理解が、この誤謬の根底にあるからです。一層の厚さが200~500nm(ナノメータ、1mの10億分の1の単位)位の、カルシウムとたんぱく質から成る層が、同心円状に何千層と集まって真珠層を構成していることへの無理解です。

真珠層のこの構造は、貝の体の中で栄養分を供与されながら、真珠袋上皮細胞という特殊な細胞により作り出されるのです。汗で表面が汚れた場合、一層を剥いて新しい層を出してあげればテリは回復するのです。このnmレベルの層の積み重なりが、光の干渉という現象を起こさせ、テリが生まれるのです。3つの誤謬の克服こそ真珠復権の鍵なのです。

第125回 | 2017.01.10

オリジネーター・日本の責務

新聞報道(中日新聞、2010年10月4日号)によりますと、真珠研究の先進地域である三重県では、高品質真珠の生産向上に向けて2つの研究を推進しているとのことです。ひとつは「スーパーアコヤガイ」を作る技術、2つは手術後の貝を静養させる「養生」技術の革新だそうです。前者は殻を閉じる力の強い貝を作ること、後者は陸上水槽で塩分や水温をコントロールする技術です。

私たちもこの都会で、細々ながら養殖技術の向上のための研究・実験を行っていますが、その私たちが昨年、多大なるショックで受け止めたのが「テリは遺伝する」という技術報道です(本稿116回)。現在その情報を追認する研究を行っている最中ですが、どうやら事実であることが明らかになりつつあります。高品質真珠を作る為の貝や養殖技術の改良、高品質の要になるテリをより強くする技術開発、いろいろな角度からのアプローチこそ、この大不況の中でも絶対に離してはいけないオリジネーター・日本の責務なのです。

第124回 | 2017.01.05

偶然は発見の母

「必要は発明の母」とはよく言われますが、「偶然は発見の母」も稀にあることです。真珠セミナーを受講していたご婦人が、「先生、私は黒蝶真珠を水の入った白い茶碗の中に入れて、出てくる不思議な色を見て楽しんでいるんですよ」と話してくれました。「誰かに教わったのですか」との問いに、「自分で偶然見つけたのです」。

これは凄い偶然です。というのは茶碗の中で出てくる不思議な色とは、黒蝶真珠に現れる反射の干渉色のことだからです。私たちが10年以上を費やして発見した、あのオーロラビューアー内で下半球に現れる反射の干渉色です。キーワードは「白」と「茶碗」の2つです。白は光を拡散反射します。茶碗の形状はほぼ半球状です。言うなれば、真珠の上半球に半球状の面光源が映り干渉を起こしているのです。積分球という空洞の内壁を球面に仕上げ、白い塗装を塗った光学機器がありますが、本例はその応用と言えるのです。

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