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 今月のコラム

今月のコラム
真珠、一粒の宇宙

小松 博

第132回 | 2017.02.27

雪原のような輝き

地球上には2つの色があります。色素や絵の具などから成る色と光が作り出す色です。真珠にもこの2つの色が共存し、宝飾品としての美しさを演出しています。光が作る色のことを光学的には構造色と言い、5つの現象、薄膜干渉、多層膜干渉、回析格子、フォットニック結晶、光散乱から説明されます。

自然界にはこの構造色の実例が沢山見られます。タマムシ、コガネムシ、クジャク、ネオンテトラ、モルフォチョウ、等々です。これまでの研究で分かってきたことがあります。それは5つの現象が複雑に組み合わさって個々の実例を作っているということです。となると真珠のテリも、多層膜干渉のみの説明でこれまで済ましてきましたが、果たしてそれで良いのか、根本的なところで考え直す必要があります。最近、白蝶真珠の雪原のような輝きを見て、多層膜干渉とは別に、ある種の光散乱が関与しているのではと考えています。

第131回 | 2017.02.20

鑑別への取り組みが縁で…

24年前、昭和62年(1987)に『真珠鑑別論序説』を世に出しました。それまでに取り組んできた鑑別研究をまとめた小冊子です。この業界では珍しく絶版にもならず今日まで細々ながら売れています。類書が全くないのが理由です。

振り返ってみるとこの24年間というのは、日本の独占からグローバル化へと、真珠市場は大転換したのです。当然ながら鑑別対象としての真珠にも次々と新しいテーマが現れました。ゴールド“ショコラ”への無孔着色の開発、様々な前処理の出現、天然真珠ブームの再来、“メタリック”淡水真珠の登場、6ミリ、7ミリの黒蝶、白蝶真珠の出現等々、その対応に追われて気が付いたら24年が経っていたのです。当研究所の総力を結集して改訂版を発行する予定です。振り返ってみて嬉しいことは、鑑別への取り組みがひとつの縁(えにし)で、鑑定(グレーディング)という未知の分野への道筋が出来つつあることです。                                          (2011年7月記)

第130回 | 2017.02.13

核と真珠の相関性

私の好きな作家である沢木耕太郎氏の短編小説集『あなたがいる場所』の論評記事(朝日新聞夕刊2011.4.16)の一節です。

「…アコヤガイが内部で真珠を育てるように、…真珠の核になるものを自分の内部に入れて、どう変化していくのかを見るおもしろさがあった」

著者のこの言葉に、核と真珠の相関性についての最も一般的というか“普遍的”な図式があることを痛感させられました。厳密に言えば、図式そのものが間違っています。ダイヤモンドの場合は地中の深いところで、炭素元素が一定の諸条件を満たすと結晶核が生成し、その核に沿って結晶が成長します。核と結晶の間には深い相関性があります。

真珠の場合、核と“ピース”を貝の体内に入れて作るのですが、核はできる真珠のかたちを決める一種の「型」の役割しかないのです。主役は“ピース”であり、これが真珠袋に成長し真珠を作るのです。「内部が成長して出てくる」という点は著者の意図通りですが…。

第129回 | 2017.02.06

風聞に惑わされず…

「…若い2人の日本人が、大規模な実験による確証もなく、同時期に、同じような内容の特許を申請しているのは不自然である…」

オーストラリアのデニス・ジョージ氏が1990年代に発表した論文『広く信じられている日本の神話を暴く』の一節です。最近オーストラリアを主舞台にひとつの主張が広まっています。西川藤吉氏、見瀬辰平氏の真円真珠特許以前に、サビール・ケントという学者がオーストラリアで発明していたという主張です。2人の日本人はたまたまそれを知り、日本で特許申請したというのです。

貝は外套膜という一種の臓器で貝殻を作ります。その外套膜の一部を切り取り、体内に移植します。その切片の一部の細胞が増殖し始め、最終的に真珠袋という真珠を作る臓器になります。一種の臓器移植・再生医療がこの特許の内容です。これは驚愕すべき発明です。風聞に惑わされず、「2人のどちらが真の発明者なのか」こそ、追及すべき課題です。

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