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 今月のコラム

今月のコラム
真珠、一粒の宇宙

小松 博

第153回 | 2017.07.31

アコヤ真珠が生き残るために<その3>誤解は未だ解けぬまま…

「真珠の研究は16世紀の中頃から世界の諸学者によって行われた。当時は真珠の中心をなす核についての研究がおよそ二百年続いた」(磯和楠吉「真珠成因研究の史的概観」国立真珠研究所報告1、1956年より引用)。

日本で真珠養殖法が発明されたのが1904年ですから、350年の研究史のうち200年余が「何を核にしたら真珠ができるのか」という切り口で研究がなされていたわけです。しかしこの切り口では何百年研究しても養殖法は見つかりません。「貝はどうやって貝殻を作るのか」と言う切り口に立った時養殖法は見つかったのです。

しかしこの新しい切り口を完璧に理解するのは極めて困難です。細胞移植、DNA、遺伝子等の分子生物学の世界だからです。現状はほとんどの人たちが核を入れると真珠ができると信じています。理論は別にして養殖技術は比較的簡単です。それ故世界中で真珠は作られているのです。真珠のグローバル化が始まっているのです。

元祖日本は、分子生物学に立脚して、美しいアコヤ真珠作りに磨きを掛けるべきです。

第152回 | 2017.07.24

アコヤ真珠が生き残るために<その2>美しさの独自性

真珠が美しいから人類最古の宝石になったということは異論のないことでしょう。何よりも歴史的事実であるからです。ではその「美しさ」の中味となると、これは百家争鳴の世界になるのです。何故かと言うと人によって美しさの基準、価値観等々がすべて異なっているからです。臨終間際の物言わぬ母の目に宿った一粒の涙に、90年余の歳月をかけて成長した一粒の真珠を見取る人間もいれば、光の幽かなゆらめきに放つ指先の薄緑の光彩に、彼女の心の奥底に宿るやさしさを見取り、生涯の契りを約した人もいるのです。

人の世界を離れて、真珠表層で起きる光の干渉現象を見てみましょう。鮮やかな赤や緑の光彩が球体に沿って複雑な消滅を繰り返している現象が観察されます。これはある種の蝶や孔雀の羽などにも見られる現象です。表層部のミクロの精緻な構造がこれらの現象を生み出します。ところが真珠の凄いところは上下半球で光彩はそれぞれ反対の色なのです。

第151回 | 2017.07.18

アコヤ真珠が生き残るために、その1

2012年4月、小論を発表しました。題して<「真珠を売る時代」から「真珠の美しさを売る時代」への21世紀的転換>です。書いていてやや説明不足の難を感じていましたが、ここにきてその理由が分かりました。真珠を作る現場をひとつの舞台に例えると、20世紀から21世紀にかけてこの舞台が大きく様変わりしたということ、日本だけがアコヤ真珠を作っていた時代を第1幕とすると、世界中で作り始めた第2幕に入ったということが強調されていなかったのです。日本の現在の生産量がかつての3分の1以下であるにもかかわらず、かつての価格以下という理由もこれで分かります。現在世界の生産量はかつての16倍以上です。これらが世界の隅々まで販路を広げているのです。では日本のアコヤ真珠が生き残るには、ひとつ言えることはテリに依拠することです。連載でその中身を追究してみます。

第150回 | 2017.07.10

オーシャンブルー

私どもが発行している鑑別鑑定書の中で、「オーロラオーシャンブルー」は、ブルー系黒蝶真珠のテリ最強の特別呼称です。

世界の至る所で養殖真珠が出来る時代かもしれませんが、ブルー系については大別すれば、アコヤ真珠とクロチョウ真珠の2種に分かれます。ただ原理原則は全く逆です。前者が白い真珠層の間に黒い粒子(ござ)を敷いているのに対し、後者は黒い真珠層だけを敷いているのです。前者はサンゴ礁、後者はサンゴ礁の向こう側、南太平洋の黒潮(くろしお)を指しています。何かの加減で黒い粒子が消えて白い真珠層だけになってしまうのは、ブルー系アコヤ真珠層が白濁する失敗に似ています。その点後者の黒い真珠層は、黒潮の波が燃やし続ける炎のスペクトルそれぞれの美しさがその瞬間に皆さんの目に留まるだけの現象です。

南太平洋の海の景色は、広い海外線と、沖合でそれを仕切る白いサンゴ礁だけなのです。

第149回 | 2017.07.03

フェニックス

私どもが発行している鑑別鑑定書の中で、「オーロラフェニックス」は、シルバー系白蝶真珠のテリ最強の特別呼称です。

フェニックスは、永遠の時を生きるという伝説中の鳥のこと、不死鳥を指します。どうしてそれが真珠のテリ最強につながるかということですが、“真珠は弱い宝石”という通説への強力な反論を試みたいという私の日頃の考えが、具現化したとお考えください。

テリという現象は真珠層のミクロな構造が光と相まって作られます。構造起因の現象ですから褪色・変色とは無縁です。大理石のような滑らかな肌が放つ、いぶし銀の光彩は経年変化とはもちろん無縁です。「…フェニックスの涙(真珠のような)は、人々の心を癒し…」と伝承にあるように、この真珠の着用は、さまざまな心配ごと、苦悩、悩みなどいつの時代にも私たちを襲う心のキズを癒してくれるのです。しかも孫子の代まで、いつまでも。

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