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 今月のコラム

今月のコラム
真珠、一粒の宇宙

小松 博

第156回 | 2017.08.28

アコヤ真珠が生き残るために<その6>球体のおもしろさと深み

ちょっとばかり視点を変えますと、真珠というのは、核の上に真珠層だけで出来た球状の覆いをかぶせているようなものです。真珠層は孔雀やモルフォ蝶の羽のように、色彩を伴った輝き(光の干渉現象)を放ちます。当然この球状の覆いもこの輝きを放つのですが、その放ち方が、世界で唯一の異色さを持っています。それは「真珠層だけで出来た」「球状」という2つに秘密があります。

真珠層に入った光は、反射で干渉を起こす場合と、透過で干渉を起こす場合の2つに分かれます。私たちが見慣れているアコヤ真珠のピンクやグリーンの光彩は、定説とは異なり、真珠層を透過して出てくる透過の干渉によるものです。これは非常に珍しい事例です。

反射による干渉はどこに出ているのでしょうか。球体である真珠が球面鏡として働き、光源像が映っていますが、その像の周囲をルーペで見ますと像に沿って赤や緑のラインが見えます。それが反射の干渉により現れた光彩なのです。

第155回 | 2017.08.16

アコヤ真珠が生き残るために<その5>美しさの永続性

私の真珠人生50年の中でも、思い出すたびに光彩を放ち続ける場面があります。

5500年前の遺跡から発掘された大粒の真珠に関する鑑定の時です。1985年、福井県の鳥浜貝塚から丸木舟と一緒に発掘された真珠(?)の鑑定です。先ず本物の真珠であるのか、真珠だとしたらどういう真珠で、どんな貝から出たものかというのがテーマです。5千年以上の間、一種の水漬け状態で真珠の保存が可能なのか、先ずそのことが頭をよぎりました。

結論として、本物の、ブリスターパールという貝殻に付着した真珠である、それを人間が道具を使い剥がしたものである、淡水産の二枚貝から採れたものである、カラスガイであることが十分推定できる、と言うのが報告書の内容でした。これまでの記録を2千年延ばした日本最古の真珠は、顕微鏡下で七色の小さな光彩にあふれていました。この現象は、カルシウムの小さな結晶が積み重なってできる真珠層が5千年間耐えたことの証拠です。

第154回 | 2017.08.07

アコヤ真珠が生き残るために<その4>すべての面が表面から出来ている

数ある宝石の中で、真珠は、生き物の生命活動の最中(さなか)で作られる唯一の宝石です。そのひとつの証しが「真珠はすべての面が表面から出来ている」ことにあります。

若干の例外を別にして、ほとんどの真珠は顕微鏡でどこを観察しても表面特有の模様が見えます。これは貝体内の真珠袋で真珠が形成される時、袋を構成する細胞約2000万個がひとつひとつのカルシウム結晶作製に参画していることに起因します。さらに凄いことは、まき厚0.4ミリ、直径7ミリのアコヤ真珠を例にとると、その真珠層はこのカルシウムが2200億個詰まっています。そしてすべての結晶がc軸を垂直に向けているのです。<その2>で述べました上下半球に補色関係の光彩(干渉色)が出るのは、このc軸が鍵を握っているのです。それにしても「すべての面が表面から出来ている」ということは大変なことです。私たちの身の回りで、これに該当するのは生き物だけです。生き物の「真珠」の所以です。

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