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 今月のコラム

今月のコラム
真珠、一粒の宇宙

小松 博

第192回 | 2020.09.25

勇気を持って品質基準の確立を

新しい「真珠振興法」の成立を受け、真珠業界独自の対応策として、真珠と冠婚葬祭とのくびきの切り離しを前回述べました。これに並ぶ双璧が客観的な品質基準の確立です。

「品質基準はある」、「養殖真珠出現以来あり続けている」、現時点での大方の人々の見解です。しかしこの見解こそ、この機会に徹底して掘り下げるべきです。

今、アコヤ真珠の生産量は全盛期の1/10までに減少しました。シロチョウ、クロチョウ真珠はかつての10倍以上の生産量です。その生産地域は世界的に際限なく広がっています。

今、日本のアコヤ真珠は「調色」されたまま輸出されています。国内でも大多数は「調色」のままです。着色の隠蔽化はアコヤでは「海から揚がったままの色」として、日常化しているのです。品質基準を確立するのに必要なものは何か、3つです。アコヤの美への愛着、それに裏打ちされた勇気、科学的分析法の確立です。発明国日本なら可能な3つです。

JOW-Japan新報2016年11月号

第191回 | 2020.09.03

冠婚葬祭よりテリを重視する時代の始まり

識者によれば、五千万本のアコヤ真珠ネックレスが日本の家庭にはあるそうです。そのほとんどは1970年代(日本の好景気の始まり)以降に購入されたものです。そしてこの“五千万本”のほとんどは、購入依頼、糸替えはされたとしても、クリーニングはされていない筈です。着用時の汗や皮膚分泌物、あるいは化粧品等によって真珠層には“くもり”を生じている筈です。この“くもり”こそネックレスの汚れなのですが。

なぜクリーニングがされていないのでしょうか。答えのひとつは真珠のネックレスのクリーニング法が知られていないからです。もう一つの答えは、こちらの方が大切なのですが、ほとんどの方々はネックレスが汚れているとは思っていないからです。

さてこういう現状の中でどう対処するかです。一つの方法として「真珠と深く繋がっている冠婚葬祭とのくびきを切り離す」ということを考えています。

先ず真珠と人間との関係を歴史的に考えてみましょう。著名な宝石学者である米国のクンツ博士は「自然のままで完璧な美しさを誇る真珠は、人類が最初に出会った宝石である」と1908年にその著書で言い切っています。この場合の「宝石」が意味するものは、当然ながら美しさを指しますが、もう少し深く言いますと、光の干渉という現象により、光が作る色彩(虹のように)を放っていることを指します。

養殖真珠の世界はこの十数年で大きく変わりました。世界中の海で、いろいろな貝を使った真珠が産出されています。大きさも色調もいろいろ異なり、その多様性が強く訴える時代になったのです。アコヤ真珠だけの時代は終わったのです。

しかしエンドユーザーの立場に身を置けば、虹のように様々な光の色彩を放つ真珠は、宝石として依然として価値ある真珠なのです。“テリ”が一層重視される時代なのです。

JOW-Japan新報 2016年10月号

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